AEでカートゥーン風爆発エフェクトを作る


AEネタが続きます。
今回はAEでカートゥーン風の爆発を作る方法を、覚え書きついでにざっくりと書いてみます。

カートゥーン風と言っても年代やジャンルによって様々ですが、トムとジェリーのようなコミカルなものではなく、今回はわりと新しい目のアニメの雰囲気を目指します。

ご本家は手書きでぐりぐり書き込んだり、マスクをアニメーションさせたり、3Dモデリングで作っていくのだと思いますが、こちらは変形系のエフェクトを使ってそれっぽく再現したいと思います。



環境

AfterEffects 2018.1ですが凝ったことはしないのでCS6とかでも問題ないと思います。

エフェクトの要素

エフェクトを作るにあたって、対象をよく観察して要素を分解して見ていきます。
各要素を再現する方法を組み合わせていけば、再現出来るんじゃない? という考えです。

実写系のエフェクトの場合は物理的な現象から要素を積み上げていきます。カートゥーンの場合も大幅なデフォルトがなされていますが基本は同じだと思います。

ただ今回は「ぱっと見てそれっぽい!」というグレードの解説ですので、あまり細かい考察は無しでいきます。

で今回のエフェクトの場合は以下のように分解しました。



  • 不規則な形が変形しつつ爆発的に大きくなる
  • 温度が高いコア部分は外側のレイヤーよりはみ出さない
  • プロミネンス的な外形が生まれたり萎んだりする
  • 上記が幾重か繰り返す
ガバガバですが、こんな感じでいきます。

マスク作成

「不規則な形」を作るためのベースを作ります。
今回は平面にマスクで作ることにしました。
マスク形状を星形を選んでコンポ中央に適当に配置します。

ここでマスク作成についておさらいですが、星形のプリセットはドラッグ中にカーソルキーやpageUp/Downキーを押すことで様々に変形することが出来ます。

例えばpageUp/Downを押すと内径のエッジが丸みが変わります。
カーソルの左右では外径のエッジの丸みが変わります。
カーソル上下で角の数を増減できます。これはホイールでも操作出来ます。
ctrlキーを押すと内径の大きさを変えずに外径だけ変わります。

外径の作成

外径のために、白色の新規レイヤーを作成します。
レイヤーを白で作る理由は、最後に色合いエフェクトを使って着色することで色の調節が楽になり、プロジェクトの再利用性が高まるからです。

白いレイヤーに漫画の吹き出しと星形の中間のようなマスクを作ります。

吹き出し型にするのは、プロミネンス風の先細りしたエッジを作りたいからです。

外径の変形

変形はアニメでおなじみタービュレントディスプレイスを使います。
パラメータはこんな感じです。

変形はタービュレント、ツイスト、バルジとありますが今回は爆発なので、変形に拡縮方向が追加されるバルジを選びました。

さらに「マスクの拡張」を使い、見えないほど縮めたものから、画面を覆うほどまで1秒かかけてアニメーションさせます。

少し物足りないので、タービュレントディスプレイスの方でも、展開をアニメートさせます。大体、1秒で90度回転するようにキーフレームを打ちました。
この白いところは後で黄色になります。


続いて、このレイヤーを複製し、上になっているレイヤーを1ないし2フレームほど後ろへずらします。

そして合成モードを除外に設定します。
そうして出来たのがこちらです。


爆風の外側ぽい感じのものが出来ました。
gifだと分かりにくいのですが、内側の黒いところは透明ではなく黒で、爆発の温度が高いところ、つまりコア部分で後で赤色になるところです。

ただ一個だけだと寂しいので、もう一ひねりします。
flame2レイヤーを複製します。出来上がったレイヤーをFlame2レイヤーより2フレームほど後ろへ配置します。

これで爆風が2度発生しますが、同じ形で2度起きるのはちょっと違和感があります。
そこで二度目の方のタービュレントディスプレイスのパラメータに変化を付けます。
今回はサイズと量を少し下げ、ランダムシードを変えました。

爆発のシャドウ部分

爆発の形状のシャドウ部分を作成します。
今回はシャドウ部分はコア部分と同じで最終的に赤色で表現でします。

flame3レイヤーを複製し、flameレイヤーが画面一杯に広がったあたり(20フレーム付近)に移動します。
シャドウ部分つまり、球形に爆発の窪み部分を表現したいので、爆発の形状よりも細かくしたいです。
そこでタービュレントディスプレイスの「量」を200に増やし、キーフレームを1秒かけて、「サイズ」を15->100、「複雑度」を1->3で打ちます。

色つけ

ここで一端色を付けてみましょう。
一番上に調整レイヤーを作り、「色合い」フィルターを割り当てます。
「ブラック」を赤色、ホワイトに黄色系に設定することで、合成結果の色に応じて着色されます。
爆発っぽく見えてきました。

ポストエフェクトの追加

グローやブラーエフェクトを追加して質感を上げていきます。
ブログでは標準のグローを使いますが、他に使い勝手が良いグローエフェクトを持っているならばそれでもオッケーです。

続いて爆発の勢いを足すためブラーを追加します。
結果はこんな感じです。

これで基本は完成になります。
あとは

  • レイヤーを重ねる。
  • 爆発に遭わせてカメラを揺らす。
  • パーティクルを足す。
  • トランジションぽくするためにトラックマットでくり抜く。
というようなカスタマイズが出来ると思います。
 
パーティクルを足してくり抜いたもの

まとめ

ノイズだけで作るカートゥーン風の簡単爆発でした。
キーフレームやタービュレントディスプレイスのパラメータを変えれば正面から受ける炎とかも出来るかも。

これは某ゲームの案件で「神風動画さんぽい感じで」という時に使ったやり方です。
他にも炎や雷バージョンなどもあるのでそちらもそのうち書こうかなと思います。

ちなみにもっと手軽にカートゥーン風を!という場合はVideohiveに素材集が沢山売っていますので、そちらを使う手もあります。
素材系はライセンスが商業利用のために「extendedライセンスで、最終製品1タイトルごと」の場合が多いので、複数の作品で使い回しが出来いでそのあたりは注意が必要です。


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